review

CHIMERICA (2013)

【軽いネタバレあり】http://www.chimerica.co.uk/  主要紙のレビューでことごとく5つ星を取った演劇。89年の天安門事件の際に戦車の前に立ちはだかる男の写真を撮ったNYTの記者が、2012年に彼がNYで生きているという手がかりをつかみ奔走する。いっぽう北…

大江健三郎『万延元年のフットボール』(1967)

おっそろしい本。これのまともなレビューが書けるようになるにはあと3回は読まないといけない。四国の山村出身の兄弟を主人公とする。彼らの曽祖父の弟が率いたとされる万延元(1860)年の農民一揆と、村に帰ってきた兄弟のうち弟が仕掛ける暴動、という2つの…

藻谷浩介・NHK広島取材班チーム『里山資本主義』(2013)

資源高に伴う貿易赤字への転落、高齢化・生産年齢人口の現象に伴うデフレ、実体経済の成長が頭打ち、といった日本の置かれた諸状況に対処する方法として、藻谷とNHK広島取材班のチームが提唱するのは、言わば資本主義のゲームを半分降りるアプローチである。…

映画「立候補」(藤岡利充、2013)

決められない政治を嘆き二大政党制導入の失敗を嘆き失望とシニシズムに逃げこむ前に眼玉をかっぴらいて観るべきドキュメンタリー。「泡沫候補」と言われ、なぜ立候補しているのかよく分からない人たちの考えをを知るためではない。それもいいけどもっと本質…

松浦寿輝「半島」(2004)

最初の二行を読んで、何これ、保坂和志?と思った。ぐねぐねといつまでも終わらない文章で、ただ保坂よりも妙に思弁的でとっつきにくい。軽い口調で切りもみ下降して意外な着地点に至る保坂節の小気味良さはない。とは言え、最初の数ページを過ぎると一文の…

辻原登「村の名前」(1990)

日本の商社の男が畳の材料の藺草を求めて中国の湖南省長沙から山奥へ入って行く。貿易公団の男に連れられて行った桃花源村では共産党の論理が昔からの共同体の上に乗っかり二層構造を成している。北京語の世界と村の言葉の世界。じりじりした暑さ、何かがお…

真山仁『ベイジン』(2008)

山崎豊子の小説に似すぎていて、彼女の『大地の子』を超えているかと問われると疑わしいが、21世紀初頭の中国を描いた点で独自の価値はある。ただ山崎豊子を超えるためには、彼女の描いた時代の中国にはなかった超格差社会のコントラストをもっと明示すべき…

Elementarteilchen (Elementary Particles)

ヒッピーの母親が産んだ、父親の違う二人の息子が対照的な性格を持つ人物に成長し対照的な人生を歩む。中心に描かれるのはセックスに対する両極端の態度。種の保存のための再生産という面と、快楽への手段という面の間に恋愛がある…ってそりゃ当然なのだけど…

佐藤雅彦”これも自分と認めざるをえない”展

ミッドタウンで11月までやっています。佐藤雅彦氏のことは『四国はどこまで入れ替え可能か』を読んでから恐ろしく頭いい人だなと思っていたのですが、この展覧会も期待に違わず面白いです。いろんな人のデスクトップの画像とかあります。なんかその人の頭の…

David Harrison, the linguists

http://www.poptech.org/popcasts/?viewcastid=245動画の埋め込み方がどうしてもわからないのでただのリンクです。 K. David Harrison discusses how language death leads to intellectual impoverishment in all fields of science and culture. Watch as …

The Band's Visit

DVDがアマゾンで見つからなかったからとりあえずyoutubeのトレーラーを貼っておきます。面白いです。

最近気になること

ちょっと横着して箇条書きで。・ジンバブエの大統領選の結果。木曜日に投票があって、野党側は勝利宣言を出している。ムガベが退陣したらすごい変化がこの国に訪れそうだが、そう簡単にいくだろうか。・idealist.orgというウェブサイト。インターンとか探せ…

SITE FIGHTS

去年の9月からずっとバイトでリサーチアシスタントをやってるんですが、雇い主の先生が少し前に本を出しました。これは僕がいま手伝ってるプロジェクトではないんだけど、ちょっと面白そうなので紹介します。Site Fights: Divisive Facilities and Civil Soc…

定量分析のインパクト

会った人によく聞かれるのが「今なにしてるの?」というとても答えにくい質問なのですが、答えの代わりとして最近読んだ本を三冊紹介。ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する作者: スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー,望月衛出版社/メ…