CHIMERICA (2013)

【軽いネタバレあり】

http://www.chimerica.co.uk/



主要紙のレビューでことごとく5つ星を取った演劇。89年の天安門事件の際に戦車の前に立ちはだかる男の写真を撮ったNYTの記者が、2012年に彼がNYで生きているという手がかりをつかみ奔走する。いっぽう北京では彼の友人が過去との対峙を迫られている。

小気味良いセリフ回しや「ゴッドファーザー」へのオマージュなど笑える場面はあるが、場面の転回の途中に挿入される中国の描きかたは総じて表層的。政府の検閲および都市の貧困という背景に見え隠れするテーマを掘り下げてはいない。

記者の友人の中国人の男が取る行動はモメンタムを集め始めたあたりで終わってしまう、彼の熱情は表現されきらないままで。主人公はアメリカを信じ表現の自由を信じ上司と戦うことを厭わないが彼の猪突猛進の帰結を示すことなく劇が終わる。

ロンドンからはアメリ東海岸にいた時よりも東アジアが遠く思えるのは気のせいだろうか? 提起した問題にスタンスを示さなくても済まされるほど聴衆にとって中国が遠いのか? 一時間半でこれしかやらないよりは、筋を絞って一人一人の行動を丁寧に描くか、三時間くらい使って全部を回収するくらいの意気込みを見てみたかった。

この国の日本食がどうも今ひとつな理由がわかる気がする。一見全く違うようで根は一緒の話だと思うのだ。