2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

平野啓一郎「かたちだけの愛」(2010)

溜息の出るような、磨き上げられた語り。交通事故で片足を失った女優と、彼女を事故現場で助け出し、さらにその義足をデザインすることになったプロダクト・デザイナーの物語。途中でAimee Mullinsという実在の義足の女優のTED Talkへの言及があるので、読み…

イザベラ・バードのハワイ紀行 (2005[1876])

イザベラ・バードは明治初期に日本の奥地を旅行して紀行文を残したことで日本人に知られているが、1874年にはハワイに半年間滞在している。この本はバードがハワイから出した手紙を訳したもの。手紙の内容は土地の地理的特徴、植生、旅行記がほとんどだが、…

マイク・デイヴィス「要塞都市LA」(1990)

アメリカ都市社会学の古典らしい。ロス市警が公共建築の操作を通じて人種差別に基づいた社会階層を固定化させ、白人コミュニティをゲートやセキュリティ設備で囲んで分断した都市を作った、と。議論の正当性は正直確信は持てないのだけど、社会学の論文はや…

池澤夏樹「花を運ぶ妹」(2000)

きのう読んだ瀬島龍三の話でインドネシア賠償が出てきたが、今日の小説「花を運ぶ妹」はインドネシアのバリ島を舞台に起こる。二人の主人公である姉妹の独白を一章ごとに繰り返す手法は若干見馴れたものだが、兄の独白のほうを二人称を使うことによって区別…

【レビュー】沈黙のファイル: 「瀬島龍三」とは何だったのか(共同通信社社会部編、1996年)

大日本帝国陸軍大本営参謀として南方での対米作戦を立案。戦後は東京裁判においてソ連側証人として証言。その前後合わせて11年間シベリアに抑留。帰国後は伊藤忠商事で次期主力戦闘機受注、インドネシア・韓国への戦後賠償に伴うビジネスを手がけ、歴代総理…

【レビュー】Tokyo Year Zero (2000)

イギリス人小説家David Peaceの東京三部作の第一作。第二次大戦直後の東京で実際に起きた連続強姦・殺人事件を題材に東京の混沌と人々の生活を描く。警視庁が殺人事件の犯人を突き止めていくミステリという要素は当然あるのだが、自分が人に紹介するなら40年…

一週間のオフをとる

この一週間のあいだは研究に直接関係する史料、文献を読まない。休むのはいつでも怖いがいつまでもそう言って低効率の作業をしてはいられない。