イザベラ・バードのハワイ紀行 (2005[1876])

イザベラ・バードは明治初期に日本の奥地を旅行して紀行文を残したことで日本人に知られているが、1874年にはハワイに半年間滞在している。この本はバードがハワイから出した手紙を訳したもの。

手紙の内容は土地の地理的特徴、植生、旅行記がほとんどだが、所々ハワイの政治・経済情勢がうかがえる記述がある。一番興味深かったのはハワイがアメリカに併合されるべきかどうかを問う講演会が開催されていたという記録。併合賛成派は砂糖の輸出にかかる関税がハワイ経済に重石になっているとし、併合してアメリカ本土へ送り出す砂糖へ関税がかからなくなれば大きな利益があるとする。反対派は大安として、ハワイ島の港の一部をアメリカ軍に租借させることと引き換えに関税を撤廃させようと訴える。バードは前者への支持が大多数であるとしつつも、どちらもハワイ人を置き去りにしてアメリカ人の都合で議論されていると見ている。

これは小笠原諸島の日本領有が宣言される前後であったことを考えると興味深い。

ロシアの存在感はまったくない。

ハワイ併合論を唱えたのはフィリップス。ウェンデル・フィリップスの従兄弟。互恵協定を支持したのはカーター。アメリカは既にハワイの砂糖農園を掌握しており、彼らは関税撤廃を併合により達成して利益をあげたい。カーターの提案はより穏健だが、ハワイ先住民に受け入れられる見込みはない。