マイク・デイヴィス「要塞都市LA」(1990)

アメリカ都市社会学の古典らしい。ロス市警が公共建築の操作を通じて人種差別に基づいた社会階層を固定化させ、白人コミュニティをゲートやセキュリティ設備で囲んで分断した都市を作った、と。議論の正当性は正直確信は持てないのだけど、社会学の論文はやや違うな、と思ったところを数点。

明確な議論の流れのなさ。ひとつの章のなかでもそうだし、本全体の章立てもそれによって何を全体のメッセージとしているのかがわからない。エッセイを集めただけ、という感じもする。プロローグはあるが、イントロダクションはない。

ソースに新聞記事を多用しているけど、これはちょっと危うくないか。もちろん最近の事件について述べるときに最もアクセスしやすい史料であるけど、バイアスとか編集のスタンスとかに左右されないのだろうか。ま、この人のスタンスだと政府文書は真実を伝えてない、と言いそうだけど。インタビューとか自分で集めたデータが少ないのがやや意外だった。