2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

藻谷浩介・NHK広島取材班チーム『里山資本主義』(2013)

資源高に伴う貿易赤字への転落、高齢化・生産年齢人口の現象に伴うデフレ、実体経済の成長が頭打ち、といった日本の置かれた諸状況に対処する方法として、藻谷とNHK広島取材班のチームが提唱するのは、言わば資本主義のゲームを半分降りるアプローチである。…

映画「立候補」(藤岡利充、2013)

決められない政治を嘆き二大政党制導入の失敗を嘆き失望とシニシズムに逃げこむ前に眼玉をかっぴらいて観るべきドキュメンタリー。「泡沫候補」と言われ、なぜ立候補しているのかよく分からない人たちの考えをを知るためではない。それもいいけどもっと本質…

松浦寿輝「半島」(2004)

最初の二行を読んで、何これ、保坂和志?と思った。ぐねぐねといつまでも終わらない文章で、ただ保坂よりも妙に思弁的でとっつきにくい。軽い口調で切りもみ下降して意外な着地点に至る保坂節の小気味良さはない。とは言え、最初の数ページを過ぎると一文の…

辻原登「村の名前」(1990)

日本の商社の男が畳の材料の藺草を求めて中国の湖南省長沙から山奥へ入って行く。貿易公団の男に連れられて行った桃花源村では共産党の論理が昔からの共同体の上に乗っかり二層構造を成している。北京語の世界と村の言葉の世界。じりじりした暑さ、何かがお…

真山仁『ベイジン』(2008)

山崎豊子の小説に似すぎていて、彼女の『大地の子』を超えているかと問われると疑わしいが、21世紀初頭の中国を描いた点で独自の価値はある。ただ山崎豊子を超えるためには、彼女の描いた時代の中国にはなかった超格差社会のコントラストをもっと明示すべき…