SITE FIGHTS
去年の9月からずっとバイトでリサーチアシスタントをやってるんですが、雇い主の先生が少し前に本を出しました。これは僕がいま手伝ってるプロジェクトではないんだけど、ちょっと面白そうなので紹介します。
Site Fights: Divisive Facilities and Civil Society in Japan and the West
- 作者: Daniel P. Aldrich
- 出版社/メーカー: Cornell Univ Pr
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: ハードカバー
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amazon.comのリンクはこちら。概要、書評があって、なか見検索ができます。べた褒めのレビューが一件ありますが、もちろん僕ではありません:
「NIMBY」という言葉をきいたことがありますか?これは"not in my backyard"の頭文字を並べたもので、公共財のなかでも周囲に悪影響を与える虞のあるもの(空港、ダム、ごみ処分場、原子力発電所など。これらをpublic badsと言ったりもする)をさします。wikipedia の説明はこちら:
http://ja.wikipedia.org/wiki/NIMBY
先生がこの本で研究したのは、「日本とフランスにおいて、空港・ダム・原発の設置場所を決定した要因は何か?」という問いです。
これまで唱えられてきた説は
「野党勢力の強い地域がこうした施設の設置場所としてターゲットにされる」
「マイノリティーの多く居住する地域が狙われる」
「自治体側が施設を受け入れることの経済効果を期待して行動する」
「政治家が自分の地盤となる地域に経済効果をもたらすためにもっていく」
とか色々あるのだけど、彼が主張する答えはこうです:
「planners deliberately seek out acquiescent and unorganized communities for such facilities in order to minimize conflict(意訳:政府は市民運動の反対がおきにくいところを狙ってNIMBYを配置する).」
また日本とフランスでは政府の取ったアプローチが異なることも示されます。フランスは原子力発電がかなり盛んで、原発を受け入れないなんて国に協力的でないといわんばかりの空気があるようです。なので反対運動は基本的に弱く、あったとしても戦車でバリケードを倒すみたいな強制によって計画が実施に移されます。
翻って日本では原子力に対するアレルギーは相当なもので、地域によってはかなり頑強な抵抗にあいます。したがって政府の側も反対派に対するインセンティブの提供など、よりソフトな方法を色々組み合わせて懐柔しようとします。
具体的には、補助金の提供、幕張メッセでの物産展の開催(つまり原発の近くでつくってるというだけで消費者離れが危惧されるので、そうした地域の生産者に売る機会を与えようじゃないの、という発想らしいです)などが挙げられます。
というわけで、読んでもいないのに本の紹介でした。この前先生がこのテーマでワークショップをやったんで、そこで聞いた情報を中心に書いてます。
あとこれは公開していい情報なのかやや自信がありませんが、日本語訳の出版の話も進んでいます。