米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

むっちゃ面白かった。1,2年前に同じ作者の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読んでいて、どちらも作者の体験がベースになっているので話がわかりやすかった。主人公は1960年代、小学校の頃にチェコソビエト学校に通っていた。そこでダンスを教えていた名物教師の人生を辿りにソ連崩壊後のモスクワに出かけていく。日本語、ロシア語の文献は勿論、ロシア外務省のアーカイブまで使って調べていて、ほとんど歴史学者のやってることと変わらない。ソビエト社会主義体制下の逮捕、収監、強制労働の描写が強烈。でも暗い雰囲気ばかりではないのは登場人物がそうした不条理を跳ね返していった過程こそが描かれているからだ。ふと顔を上げると目の前を買い物袋を下げた人たちが歩いていて、ジョギングしている人がいて、警官と和やかに話してるおじいちゃんがいて、この全てがなんと有難いことかと思わされる。自分は何に文句を垂れていたのだ、と。

なんか全然言い足りないのだが、とにかくお勧めです。