ロンドン

ロンドンはものすごくグローバルな都市だ。

こちらに来てすぐ、日本からたまたま来ていた友人とアフタヌーンティーをした。3段に重なった皿にスコーンとサンドイッチとパウンドケーキが乗っていて、紅茶がついてくる。昔の英国貴族はこうやってお菓子を食べながらお茶を飲んでゆっくり午後を過ごしていたんでしょうね、というようなことを友人が言った。給仕をしてくれたのは黒っぽい髪の毛をした、たぶん東欧系の女性だった。2011年、大英帝国の首都の真ん中で、移民労働者に給仕される日本人二人。張り子の伝統。

ロンドンは思ったより寒かったので、コートを買った。fcukで応対してくれたのはロシア系の女性で、話したもう一人の店員はたぶんドイツ系の男性だった。この二人の訛りはそれぞれ知人に似ていたのでなんとなく出自の予想がついた。そのあと無印良品に行って買い物をしたら、店員は完璧なBritish Englishを話す、おそらくこちら生まれの韓国系の女性だった。そういえば僕の借りている部屋の大家は韓国人だ。部屋の入っている団地はイスラム教の人が多くて、廊下にゴミを捨てないでください、という掲示は英語とベンガル語(たぶん)で書いてある。近くには大きなモスクがあり、したがって周りは南アジア・アラブ・アフリカのイスラム教徒の移民が多い(移民街ですよね、治安大丈夫なんですか、と言われたこともあるけど、あの、言ってみれば僕も移民なんです。アングロサクソンの人にしたら僕もバングラデシュ人も同じくforeignに見えるはず)。女性は黒い布で体の線を隠して、髪も覆って、顔は出している人が殆ど。目の周りだけ出している人もたまに見かける。若い男性は白装束の上にパーカーを羽織って、白い帽子を頭に載せていたりする。当然、近所にはハラール(戒律に沿った処理をしていることを指す)の表示があるレストランや食料品店が並んでいる。

僕が住んでいるこの地区はロンドンの東部で学校は中央部にあるので、バスで学校へ行く途中にシティを突っ切ることになる。この地域を通る時は景色の中のスーツを着ている人の割合が一気に高くなる。うちの周りではほとんど誰もネクタイなんか締めていない。学校の近くでバスを降りると観光客らしい人も多く、スーツ率は少し下がる。学校から西に15分も歩けばチャイナタウンで、うまい飲茶が食える。高いけど。その途中には映画館やら劇場やらが乱立している。

何が言いたいかというと、僕はロンドンが好きだ。皆がいろんな見た目をしていて、おそらく追っている流行とか、見ているテレビとか、聴いている音楽とか、読んでいる新聞とか、信じている神様とかも全部ばらばらで、それでも同じ2階建ての赤いバスに乗って肩をぶつけ合いながら狭い座席に収まって、それぞれの言葉を(必要ならそれぞれの訛りで英語を)話して暮らしている都市。人と違うのが当たり前である都市。